誰を幸せにするのか? 誰を不幸にするのか?
2017年 02月 19日APカンパニーの成長停滞、そして 一風堂の上場。
果たして「飲食業」における経営規模の拡大路線は「誰を幸せにし、誰を不幸にするのか?」を、よく考えたいものだ。
ただでさえ、収益率の低い飲食業である。
(※飲料主体の業態は除外。)
規模拡大に伴う「本部拡充」には、私は疑問符を投げかける。
飲食業界の主体は、99%現場である。
本部は、現場ではない。
この本質を見誤ると「倒産」の二文字に限りなく近づく。
この20年間、幾多数多のセンスの良い経営者が一斉を風靡し、そして塵のごとく消えていった。
一人の人間が影響を与えられる人間の数は、色々な論文は存在するが、凡人であるならば せいぜい3~4人。
もちろん、カリスマは存在する。そういう特異な例は別して、せいぜい その程度。
(あなたの考えに、心底共感してくれる人の人数は何人いますか?)
それ以前に、たった一人の人間でさせ幸せにすることは とてもとてもエネルギーが必要である。
「共感性のない企業には、永続性は存在しない」
それなのに、毎月毎月 新店舗をオープンし、企業理念の「き」すら根付かない飲食店に、何の魅力があるでしょうか?
もちろん そういう飲食店であっても、ビジネスモデルさえ しっかりしていれば魅力がゼロではない。
「価格」「安心感」「美味しさ」「迅速性」
しかし、外食の魅力とは何なのであろうか?
上記の要素であれば、最終系はロボット営業で事足りるし、たぶん数年後には それに近い形になっているはずだ。(もう始まっている)
つまり、極力 「人間を介さない」外食産業という分野が生まれるはずだ。
もう ここまで来ると、飲食業従事とは言わず、製造業従事である。
製造業が悪いわけではないが、飲食業の本質とは相反する業界である。
これで良いのか?
極論を云えば「飲食業の規模拡大」=「飲食業の製造業化」である。
誰を幸せにし、誰を不幸せにするのか?
貴方の目の前の人を幸せにするのに、どれくらいの労力が必要なのか?
それを考えただけでも、「飲食業における本部機能を膨張させる経営」を確固たる自信で否定する。
~~~~以下 ニュース転記~~~~
ラーメン「一風堂」が上場で直面する成長の壁
東洋経済オンライン 2/19(日) 6:00配信
博多ラーメン「一風堂」を運営する力の源(ちからのもと)ホールディングスが3月21日にマザーズに上場する。上場に伴い、80万株を新規発行、創業者で会長の河原成美氏が保有する20万株を売り出す。
1株当たりの想定価格540円で計算すると時価総額は約60億円になる。新株発行により調達する4億円超の資金は、海外出店費用や店舗のシステム投資に充てる。
力の源は主力業態「一風堂」を直営中心に、全国主要都市で126店舗を展開。ほかにもラーメンダイニング「五行」、フードコート業態「RAMEN EXPRESS」といったブランドもある。直近2016年3月期決算は売上高208億円(前期比16.9%増)、営業利益5.0億円(同284.2%増)だ。
■官民ファンドも出資
ラーメン主体の外食チェーンとしては「日高屋」を運営するハイデイ日高(売上高367億円、営業利益43億円、時価総額693億円)に遠く及ばず、北陸中心に「8番らーめん」を展開するハチバン(売上高76億円、営業利益5.2億円、102億円)にほぼ近い規模となっている。
同社はレストランバーのマスターだった河原氏が1985年、福岡市中央区大名に「博多 一風堂」1号店を出店したことにさかのぼる。
翌1986年に力の源カンパニーを立ち上げ、1994年には新横浜ラーメン博物館内に出店、関東進出。河原氏がテレビ東京の「TVチャンピオン」の「ラーメン職人選手権」を3連覇したこともあり、知名度が高まった。
2008年に米・ニューヨークへ進出したのを皮切りに、シンガポール、中国、フランス、イギリスなど海外12カ国63店舗で展開している。2014年には官民ファンドのクールジャパン機構を割当先とする第三者割当増資で約7億円を調達、最大13億円の融資枠を設定している。
同社の業績は好調のようにも見える。だが、公表された目論見書には連結決算については2015年3月期と、2016年3月期という2期しか記されていない。
有価証券報告書には通常、5期分の主要な経営指標等の推移が掲載されるが、過去2011年12月期~2013年12月期は単体決算が、2014年3月期については3カ月の変則決算が掲載されているだけで、業績の比較が難しい。収益性にも不安が残る。記載されている経常利益は単体から連結を含んでもほぼ横ばいだ。
■海外事業を拡大させる計画
こうした点について会社側は「持株会社への移行と上場準備を本格的に始めたのがこの時期で、2014年から連結決算体制に移行したため」「2015年3月期は国内の出店費用、2016年3月期は欧州を中心とする海外の投資先行の影響で利益が下がっている」と説明する。
収益のほとんどを稼ぎ出す、国内の店舗数は増加傾向にあるが、基本的に出店ペースはゆるやかだ。人口も縮小していく中で、立ち呑み形式の「一風堂スタンド」といった新業態の開発と、「のれんわけ制度」を拡大戦略の中核に据えている
のれん分けとは、同社から独立して店舗オーナーとなる制度であり、業務委託の形で「一風堂」店舗を運営する。国内27店ほどがのれん分け店である。異動がある本社社員と違い、地域密着の店舗運営ができるとする。
一方で成長の柱と見込むのが海外事業。麺をすする行為にかけて「Zuzutto」(ずずっと)という文化を世界に広めていくことをテーマに、2020年に海外200店舗を目指している。調達する資金の使途を、パリやロンドンの出店費用としているのもこのためだ。
63店舗中、最も多い中国でも15店程度。残りニューヨークやロンドン、シンガポール、パリ、オーストラリアといったエリアは数店舗ずつを展開するにとどまる。特に欧米の旗艦店舗では日本とは異なり、ほぼフルサービス式でラーメンの価格も1杯1500~1800円程度と倍の価格で提供している。
さらに、文化や嗜好の違いに合わせて、各国ごとにレシピを変えているという。地域毎に収益のとれるビジネスモデルを確立するには時間がかかりそうだ。
株式公開をするからには、外部の厳しい目にさらされ、成長を続ける必要がある。はたして一風堂はその重圧に耐えられるのか。まずは3月9日にも決定する公開価格が最初の試練となる。
常盤 有未